約 220,429 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2643.html
「何を考えているんですか!? 神姫持ってないなんて嘘もついて」 「まあ落ち着きたまえ」 「落ち着けないですよ!……あっちは負けてもここを出ればいいのに、こっちは負けたらヤバい仕事を手伝えって言うんですよ。ハイリスク・ノーリターンじゃないですか……悪条件すぎます」 胸ポケットにいるシオンを垣間見る。不安そうな、心配そうな瞳が映る。 ……そうだ。 シオンはまだ一回も勝てていない。 悲しい現実だけどシオンはバトルで勝てない。 これじゃあ、高い確率でこっちの負けじゃないか。 今から僕があの人に誠心誠意謝って許してもらおうか。それか、説得して君島さん自身にやってもらうしか……。 「長倉君は逃げるのかね」 「それ以前に君島さんが原因でしょ!……僕に非難されるいわれは……」 「長倉君はシオンを治す為になんでもやるのだろ? だったら、キミたちが私の代わりに彼とバトルをするのだ。これは私の……『授業』だ」 「ッ!?……わざとこうなるようにしたんですか。ガラの悪い人に喧嘩を売ったのも、この為ですか」 「ふふ、どうだろうな……」 ああ、絶対この人の思惑通りなんだろうな。だからって、これでどうやってシオンのバトル恐怖症を治すんだよ。 僕がすごく危ない立場になっているだけだ。 「シオン君、ちょっと出てきてくれるかな」 「……えっと、なんですか?」 君島さんがポケットから顔を出したシオンに話しかける。 目と目を合わせあう君島さんとシオン。 「シオン君はオーナーの長倉 螢斗君を……好き……いや、愛してるかね?」 「へ、ちょっと、何を……」 「長倉君は黙ってるのだ」 「……はい」 眼光が鋭くなり何も言えなくなった。 君島さんは、シオンに一体何を聞いているんだよ。 訳が分からなくなってきた。 「私は……この感情が人間の持つ好きや愛かどうかはわかりません。私は神姫ですので。……ですけど、螢斗さんは何よりも誰よりも大切なマスターです」 「……ふむ。まあ、よしとしよう」 でも、君島さんはシオンが答えた言葉にまんざらでもなさそうにしている。 シオンの答えに僕が恥ずかしくなっただけでもあるけど。 「次、長倉 螢斗君」 「え! は、はい」 今度は僕か。 何を聞かれるんだろうか。シオンの事かな。 「それでは……長倉 螢斗君は――」 ほら、それでやっぱり「シオンを愛してるかね?」とか聞くんだ。 僕はシオンを家族として愛してる。 ……それが僕の答えだ。 さあ、どこからでも来い! 「健やかなときも、病めるときも、喜びの時も、悲しみの時も、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、そのいのちのかぎり、堅く節操を守ることを誓うかね?」 「――誓いま――って!……なんでですか!? いつからここは結婚式になったんですか!? おかしいでしょ!」 「おっと、言い間違えた」 「間違いようがないですよね! セリフ長かったですよね!」 頭が痛くなってきた。この人は物事を真面目にちゃんと進められないのか。 「ゴホン、改めまして。……長倉 螢斗君、シオンは大事かね?」 あれ? なんだ、そんなことか。 そんなことは決まってる。 「大事です」 君島さんの目を真っ直ぐ見詰めて言い返す。 シオンが一番大事に決まっている。 「ふむ。だったら、あのチンピラと神姫バトルでぶつかってくるのだ。そして……勝ってくるのだよ」 「いやいや! 話が繋がっていませんよ。そもそも現実問題、シオンはバトルで一回も勝てたことないんです。不可能なんですよ」 言うと、シオンは悲しそうな顔になる。 うぅ、正論の筈なのに僕の心がすごく痛くなる。 「これまでは軽い試合だった。だから、キミもシオンも本気になりきれないのだよ。背水の陣で挑めば、おのずと勝ちが見えてくるさ」 「……う……はぁーー、わかりました、わかりましたよ。死ぬ気でやれば勝てるかも、と言いたいことはわかりました。……やろう、シオン」 身体をひるがえして、僕はみんなのいる筐体前へと戻ることにする。 もういい、君島さんなんて知らない。 「……でも、大丈夫ですか、危ないお仕事するんですよね?」 「シオンが負けなければいいさ」 「私が……ですけど……」 シオンが不安そうに言う。わかってるさ。だけど、もうどうしようもない。 主に君島さんのせいで決まってしまったけど、謝ってもバトルすることは覆らない。 そんな気がする。 「もし、負けた時は……負けた時に考えるさ」 ―――― 「お、来やがったか。待ちくたびれたぜ」 筐体に寄りかかって、その男は自販機で買ってきたであろう缶コーヒーを飲んでいた。 淳平たちは無事だ。喧嘩っ早い人ではないらしい。 その淳平が僕の傍まで駆け寄ってきた。 「螢斗だいじょうぶかよ、まじで姉御のかわりにやるのか、勝てんのかよー。俺、螢斗いなくても一生懸命生きていくからなー」 「負ける前提になってる!? ……大丈夫。死ぬ気で戦ってみせれば勝てるって君島さんが言ってたから」 「……でもよ~」 「マスター情けない声出さないでください。螢斗さんとシオンはバトルする決意してるんだから、やらせましょうよ。負けたら……マスターもお仕事付き合いましょう」 「えっ!? それはちょっと……」 「マスター」 「はい、そのつもりです!!」 ミスズがオーナーの淳平をいつもの絶対零度のような眼で睨みつけて、言いなりにさせてしまった。 ……人としてそれはどうなの。 「ミスズ、その気持ちだけ受け取っておくよ。負けたら、僕がすべて請け負うさ」 「そんな!? 螢斗さんは優しすぎます」 シオンに聞こえないように、小声で淳平に伝える。 「もしも、負けたらシオンを頼むよ」 「螢斗~……約束はしねーぞ……それでいいなら」 「うん、それでいいよ。ありがとう」 まあ、本当に負けたくはないんだけどさ、一応最悪のケースの為にそういうのは残しとかないとね。 「んじゃ、とっとと、おっぱじめようぜ。準備は済ませといたから、チビはそっちでやれや」 「はい、よろしくお願いします」 「……けっ……ほら、来い」 「…………」 舌打ちのように口から音を出すと、チンピラさんは自分の神姫を手の平に乗せて、缶コーヒーをごみ箱に捨てた後、筐体の向こう側についた。 「勝てる……戦える……勝てる……戦える……」 極度の緊張でシオンが自己暗示のようにブツブツと何か呟いている。 「僕の心配はしないで」 「勝てる……戦える……でも」 「おもいっきり、バトルしてみるんだ。今までの戦績なんて関係ない。バトル恐怖症も関係ない。夢中になって……バトルを楽しむんだ」 「……はい」 まだ緊張はしてるだろうけど、これでなんとかバトルはできるだろう。 僕は自分たちのブースについて、シオンを送り出す。 僕の命運を決める戦いに。 ―――― 周りは一面の砂。砂。砂。 砂漠のステージになっている。遠くの方に崩れて建っている、原形を留めていないビルがあるだけの簡素なステージ。 私はそこに降り立つ。 左手にフェリス・ファング「フェリスガン」と右手に「ぺネトレートクロー・烈」を持ち、構えながら、相手の方を探してみる。 「私が負けたら、螢斗さんが……」 螢斗さんに聞こえないぐらいの小声で独り言を呟く。 私なんかが、螢斗さんの人生を左右するようなバトルをすることになった。 勝てるのだろうか? でも、勝たないと螢斗さんが……。 チゥン! と、私のヘッドパーツ「フロンタルラウンダ―」に何かが掠った。 『マズイ! シオン、前から来てる!』 私の耳に、螢斗さんの声が聞こえ出した。瞬時に私はその場から駆け出す。 足を止めてたら撃たれる! チゥンッ、チゥン、チゥンッ。 相手の人が猛スピードでこちらに向かいながら、手に持った二丁の拳銃を乱射してきている。 移動している私の足元に――追尾するように弾丸が当たってきている。 負け続けてきた私はバトルですっかり逃げ足だけは速くなったみたいだ。 全力で脚部スラスター、背部ブースターを作動させて、右方向に低空でブーストしていく。 相手の方はこちらに、後、数十メートルという所で私よりも、さらに加速し出した。 でも、相手の方は撃つわけでなく、左手の拳銃、厚い銃身で殴りかかってきた。 まったく無駄のない動きだったので、右手に持っていたぺネトレートクロー・烈でガードをするしか手がなかった。 「クゥッ!」 神姫素材で出来た歯を食い縛る。 ガンッ! と重たい音が響き渡る。 相手の方の顔を見る。 左目に眼帯をしているのに、なぜか妙に尖がったサングラスもしているムルメルティア型の方だ。 サングラス越しでもわかるぐらいに、記憶にあるイスカお姉ちゃんよりも顔の表情が動かない。 今もこうして私が力を込めているのに、ムルメルティアの方は、力をまったく入れていないが如く顔のパーツが変わらない。 でも、その堅い表情の口が突然開いた。 「……貴君はどうして戦う?」 「どうしたんですか。武装神姫がバトルすること、戦うことは当然です!」 答えながら、フェリスガンもぶつけ合わせ、相手の方の持つ銃身をはじき返した。 どちらも双方間合いを空ける。 ムルメルティアの方の、無表情の口から透き通るような声が聞こえ始めてきた。 「そうだな。……では、貴君はどうだろうか? バトルが辛そうだ」 「そんなこと……そんなことはわかっています! でも私が勝たないと螢斗さんが……」 「その名が貴君の上官か? よっぽど大切なんだな。武装神姫が自分の上官を大切に思うのは当然。だが……それでも貴君はどうしてバトルができないのかな?」 双銃を擦り合わせ、弄りながら問いかけてくるムルメルティアの方。 「これは私自身の欠陥です……検査しても見つからないようなバグを持っているだけ……です」 『シオン、そう言うなよ』 通信から螢斗さんの物悲しそうな声が聞こえてくる。 こればっかりは私もわからない。武装神姫は普通、バトル拒否なんて起こさない。だったら私自身に問題があるとしか……。 「本当にそうなのだろうか?」 「? ……何を言っているんですか、私にあるとしか。あなたは何か知っているんですか? この拒否反応を」 この方は私が考え付かなかった答えを持っているんだろうか。 「そうだな、バグの問題を考えるとしたらー……貴君の上官が問題かなー? フフフ」 「は……今……なんて……言いました」 突然間延びし出した声を出した相手の方から、私の耳に信じられないような答えが聞こえ始めた。 「だって、それしか考えられない。神姫の自分が言うのもなんだが、武装神姫は世界でも有名になりつつある機械人形だ。そんな簡単にバグは残しちゃあいけない。……だったら考えられるのは……持ち主が雑に扱っているからだ。知らず知らず、貴君はその螢斗という上官によって故障させられているんだ」 ピクッと私の肩のジョイント部分が動いた。 「持ち主の人間が雑に扱おうが、神姫のCSC性格決定によっては従順であることもある。貴君が想っていても、相手の人間はどうだろうか? 嘘を並べて、キミを無理矢理強いらせているのではないだろうか――」 「それ以上、喋らないでください」 『あれ?……ねぇ、シオンどうしたの。聞こえ――プツッ――』 私は普通は切らないオーナーとの通信装置の電源を切った。 相手の方の言うことを鮮明に聞くために。 「――人間は……嘘を平気な顔して喋るからな。武装神姫は少女のような姿をした可愛い人形だ。日本中のどこかを探せば特殊な性癖を持つ上官だっているだろう? そんな神姫たちを老若男女問わず、欲の捌け口にしていることもある。それで後天的にバグが出来てしまった。そんな所だろう。……だいたい、貴君の上官だって――」 「喋るなっ!!!」 ドゴォッ! と相手の頬を武器で思いきり殴った音だ。 私は起動してから初めて“言葉”を荒げた。 間合いなんて関係ない。その場から消えるような速度で、ぺネトレートクロー・烈を相手の顔目掛けて渾身の力で殴りつけた。 CSCが熱い。 怒りという感情が込み上げてきて私はそれに身を任せていく。 ムルメルティアは当たる寸前に身体を後ろに倒し衝撃を和らげていた。 それでも、完全に衝撃を殺しきれず片目を見開きながら数メートルは吹き飛んでいった。軍帽と掛けていたサングラスは左右に飛んでいき砂に埋もれる。 吹き飛びながらも、地面からすぐに仰向け状態から態勢を立て直した。 「い痛ッ……おや、怒ったのかな?」 「言って良いことと悪いことがあります。あなたは私のマスターを侮辱するという最大に悪いことを言いました。だから、私はあなたを――“壊します”」 「……ふ、神姫が神姫を破壊するか。バーチャルだから自分は物理的に壊れはしないのだが。まあいい……来い!」 私は高速で近づきながら連続にフェリスガンを発砲。相手は走りながら距離を空けつつ双銃を撃ってくる。 私は右に左と、ジグザグ飛行、フェイントをも織り交ぜながら弾を避けていく。 さっきまで相手側のスピードの方が速かった気がしたのに、今はこちらの方が圧倒的に――速い。 「うっ……やるな!」 相手も素早い動きを続けていっているが、こちらの銃撃をかわしきれず脚部、肩部と着々と当たっていく。 身体が軽い。相手がよく見える。弾を当てていける。不安、恐怖なんて一切ない。あるのは螢斗さんを侮蔑されたことへの怒りだけ。 ――私はこの神姫を倒す。 私はフェリスガンの基部分を取り外し、リアパーツ「バリスティックブレイズ」の背面キャノンに付くバレルをも外す。 「プレシジョン・バレル、セット」 これがフェリスガン本来の姿。 ライトガンである「フェリスファング」の銃口に「プレシジョン・バレル」を装着することにより、この武装はライフルとなる。 それと予備知識、この「プレシジョン・バレル」元来出回っているものではなく、劣化版だ。なぜなら、バレルにパーツとしてある「カタマランブレード」の刃が付いていないから。 撃つだけなら支障がないからと、前マスター凛奈さんが中古で買ったものということ。こういうのはしっかりしてほしいものだ。 私はぺネトレート・烈を仕舞い込み、両手でプレシジョンライフルを構え相手に狙いを付ける。 「いけぇッ!」 右手はグリップ、左手を細い銃身に添えて、“二回”引き金を引く。 プレシジョンライフルから放たれる銃声が同時かとも錯覚する二発の弾丸。 それは相手の持つ二丁拳銃を狙ったもの。 それが持っている厚い銃身に当たる。二発ともだ。 「チィッ!!」 二つの銃は相手の後方まで、交差しながら弾け飛んでいった。 だが、主武装を失っても諦めていない眼つき。腰元に備え付けていたと思われる二振りのナイフを取りだして来た。 それを構えて文字通り特攻を仕掛けてくる。 私は怒りを感じながらも冷静に見極め双刃の斬撃をプレジションライフルで盾にして防いでいく。 「サレンダーしてください。もうあなたに勝ち目はないです」 「く、……まったく甘ちゃんだな。戦いは最後までやるものだ!」 「そうですよね。では……」 プレシジョンライフルを乱暴に扱いながらも、私は足を軸にして身体全体を捻り、それで回転させる。 腕に遠心力を乗せて、相手を横から力いっぱい持っているライフルで殴りつけた。 「グァッ!」 今度は、相手は同じ轍を踏まず、衝撃によって武器を失わなかった。が、離しはしなかったが腹部を押さえて後ろに吹き飛ぶ。 「これで、終わらします! エクストリーマ・バレル、セット!」 私はリアパーツ「バリスティックブレイズ」にあるあと一つ、最後のバレルを取り外した。 プレシジョンライフルの銃口、のさらに先にバレルを装着。バレルを繋ぎ合わせ、装着することのできるフェリスガン最終形態。 「プレシジョンエクストリーマ・シューター」 エクストリーマ・バレルは本来“機関銃”だ。それを曲げて形態変化。 プレシジョン・バレルと組み合わせることで、その力を最大限発揮することのできる武装。 私は今出せる最速で相手を追いかけていき、吹き飛んでいる相手に同じ速度で縋り付く。 CSCのある近く、その胸部に銃口を押し当てた。 「一点集中! 貫けぇっ!!」 ステージ全体に響き渡るような気合いの一声の後、引き金を引く。 銃身がバレルで細長く伸びた銃から放たれる光線。それに加えてのゼロ距離の発射は、相手のアーマーをも無意味にし胸を貫いた。 相手の背中から見える橙の残光は、遥か遠くまで伸びていき消えていく。 「…………ふ」 相手の方はなぜか不敵な笑みを残して、姿は掻き消えていった。 後に残るは砂漠に吹く風と砂塵だけだった。 「ふぅ、終わりました。……あれ?」 我を少し忘れていたけど、もしかして私は初めて勝てた? そんな、実感が持てないまま、私も足先から消えていく。 消える寸前、砂漠のステージ全体へ機械音声が聞こえ出していた。 『WINNER シオン』 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1311.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 神姫の構造と戦闘について ※この雑文は武装神姫に対するALCの勝手な解釈です。 一応本編ではこの解釈で考えてますよ、的なものです。 以上を考慮した上でお読み下さい。 オレ設定に興味は無いと言う方はどうかスルーして下さい。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る 神姫の構造 武装神姫の構造は中枢部、末端部、装備の3つに分類できる。 中枢部 神姫の最低必要条件。 頭部、首部、胸部(胸アーマーの部分、及び腹部は含まない)のみの構成。 これにCSCを搭載すれば神姫と識別される。 (この状態では電源は無いため、有線接続が必要だと思う) 交換が効かず、破損=神姫の死であるため堅牢なシェルで守られていると思う。 バトルに使用する武器は、このシェルを傷付けられないのが前提。 非常用のバッテリーもここに内臓されていると思う。 頭部は思考、嗜好などを決定する部分のひとつ。 CSCから影響を受け、その方向性を決定するが、頭部自体の傾向も強くあると思う。 (アーンヴァルは真面目な子が多いとか…) 胸部はCSCの基部であると同時に、神姫の身体機能の最大値を決定する部分だと思われる。 トルクがここで決まると言う感じだろうか? (マオチャオは素早いとか、サイフォスは腕力があるとか…) もちろんCSCの影響を受け、性能は変化すると思う。 余談だが、神姫は全て裸素体だと考えている。 フィギュアの塗装はパイロットスーツみたいなもの? (ジルダリアならブラとパンツだけだ!!) 当然“デフォルトでは”胸の先端や股間部分は何も無いと思うが…。 交換用の18禁パーツが出回らない訳は無い!!(力説) 末端部 いわゆる手足、それに加えて中枢部に含まれない腹部も末端部のひとつ。 ここは神姫の体であると同時に交換可能な装備でもあるため、換装やカスタマイズも可能。 (作中ではレライナが脚部を改造していると言う設定になっている) 腹部には神姫のメインバッテリーである燃料電池が内蔵されている。 燃料電池の種類はさまざまだが、基本的には水素を補給し、酸素と反応させることで電力を得る仕組み。 しかし、この機能を使用したとしても、やはりクレイドルによる睡眠と充電は必須。 (補給用の水素は商品なので有料。バトロンの急速充電池がこれだといいな、とか・・・) もちろん、この機能を使用せずにクレイドルの充電のみでも活動可能。 また、別売りのバイオ型燃料電池と換装すれば、神姫は食事から糖分を摂取し電力に還元することが可能になる。 (食事できる神姫の科学的説明・・・になる?) そして、燃料電池だということは活動すると“水”が生成されてしまう訳なのだが…。 あ…、えっち機能のある(性器のある)お腹も売ってると思う。 装備 言わずと知れた武器防具。 取り外しは容易であり、簡単に換装が可能。 手で握るものの他、ぷちマスィーンズなどもこれに分類される。 武装の威力はおそらく最大でもガスガン程度。 これ以上になると人間に対する殺傷能力を持ってしまい玩具としては危険。 近接武器ならカッターナイフとか? どちらにせよ使い方しだいで人間に攻撃も可能。 (神姫の銃弾が目に入れば失明の危険はあるし、頚動脈を狙えば刃物で殺せる) これは現実のエアガンや包丁等でも同じ事なので許容できるはず。 当然、防具はその威力で破壊できる物に限られる。 (その場合、アーマー系は消耗品なので値段も安いはず) また、前述のとおり中枢部は堅牢なシェルで守られる為、バトルによる神姫の『死亡』は無いはず。 もちろん、中枢部を守るシェルのような強度の高いものは、防具としての使用は禁止だと思う。 つまり、これに当てはまる武器防具が公式レギュレーション(この作品内の公式です)に相当するはず。 自作武器や改造武器はこの審査を受けなければ公式戦での使用は認められない。 もちろん、違法改造の武器はこれに相当しない。 戦闘について 神姫が強くなると言うのは、力が上がるとか素早さが高くなるとかでは無いと思う。 きっと百戦錬磨のアーンヴァル(たぶん非力)が、生まれたてのサイフォス(腕力は凄そう)と腕相撲すれば必ずサイフォスが勝つと思う。 これが、剣を使った勝負となると話は別。 (剣道八段の小柄な老人と、剣道初段の大男の戦いを想定すれば分かりやすいだろうか?) つまり、神姫の強さは能力値ではなく技術(スキル)的な強さと、経験を反映した最適化による効率の向上だと言う事になる。 また、神姫は案外“頭が悪い”と思う。 計算の速さとかはコンピュータなので当然早いのだろうが、応用力に欠けるのではないだろうか? 狙撃が得意な神姫と言うのは、遠くの目標に弾を当てられるだけであり、狙撃の最適なポジションの選定とかはマスターの指示待ちになる筈。 でないとマスターが戦闘を指示する意味が無くなるし…。 もちろん、経験を積んだ神姫はかなりの精度でその手の判断が出来るようになるのだろうが、マスターの指示が完全に不要な神姫はいないと思う。 実力差がある場合ならともかく、互いの実力が伯仲している場合、マスターの指示の有無(あるいは良し悪し)は確実に勝敗に影響する。 こんなところですね。 くれぐれもALCの勝手な解釈だとお忘れなく。 そのうちコラムとか、対談形式で纏めて読み物にしておきたいけど・・・。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る
https://w.atwiki.jp/busousinki/
武装神姫 BATTLE COMMUNICATION @wikiへようこそ DeNAのポータルサイト・SNS「Mobage」内のソーシャルゲーム「武装神姫 BATTLE COMMUNICATTON」の攻略wikiです。 最新情報は、武装神姫 BATTLE COMMUNICATTONwikiをご参照! 携帯からのアクセスの場合、こちらをご利用ください。 身内用、自分のメモ用として作っています。過度な期待はしないでください。 誰でも編集可能にはしています。なので編集は自由です。 武装神姫とは? 武装神姫(ぶそうしんき)は、コナミデジタルエンタテインメントから発売されているアクションフィギュアシリーズのことです。 合計: - 今日: - 昨日: - バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、メールでお問い合わせください。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/960.html
八幕。再度上幕。 新しくなった琥珀色に染まるコーヒーから立ち上る薄く白い湯気。そのカップに視線を向けることも無く、未だ信じられぬといった感じでアキは相槌を打った。 「そっか。だから『姉妹』て事・・・」 よもや・・・それこそ在り得ない確立と言えるかもしれない。 あの『ゼリスさん』のボディを受け継いだ他の神姫に会えるとは思っていなかった。 会う可能性さえ想定していなかったアキは、高校一年生であるという・・・彼女にしてみれば4つほど年下になるのか。その年齢不相応に落ち着いた感のある先の少年、マコトの説明を受けてようやく理解した。 当のルクスと、先ほどまで見事な舞を見せていたアーンヴァル「フェスタ」は何やら親しげに話している。 (あ、いいなぁ) 姉妹かぁ。と、心中続けて、アキは正に運命的に巡り合った自身のパートナーの『姉』にもう一度目を向けた。 いわゆるアーンヴァルタイプのノーマルスーツカラーであるが、確かに腿のスペーサージョイントから先の色が違う。鮮やかな翠色のリングラインが一本だけ入り、その先・・・爪先までのパール部分にはうっすらと草色が混ざっている。 「あ。そういやぁ。ルクスは、いつ気付いたん?」 ふと疑問に思い訊ねた声にルクスは顔を上げる。 「初見で、違和感のような物がありました。どこかで聞いた事がある『音』だと」 「音? で気付いたの?」 「はい、足音です」 フェスタの問いに小さく頷きながら。 「私は、母様は勿論。姉様の足音も、今まで一度も聞いた事がありませんが。しかし」 目を閉じ、思い出すように続ける。 「確かに解りました。この足音を知っている。いえ、正確には音ではなく、何と言えばいいのか解りませんが」 困ったようなルクスの声を聞き、今まで話を聞いていたマコトがカップティーを下ろしながら小さく言った。 「きっと、オレ達には解らなくても。解るものなんだと思います」 確信を持った、しっかりとした言葉。 「・・・。うん? そうやね」 その一言に納得したらしいアキをルクスは嬉しげに見上げていた。 「ルクスが、お母さんから貰ったのは。『瞳』なんだよね」 「はい?」 声に振り返れば、フェスタがぐっと身を乗り出して来ていた。 驚いたルクスが身を引く暇も無く、すっと両の頬に手、そして細い指を回されて。そのままフェスタは顔を寄せてくる。 じっと真正面から眼を覗き込まれ、目が近いことにはっと気付けば鼻が触れ合う程の距離にある・・・端整な姉の顔と瞳。 「あ・・・」 抵抗する事も出来ず、そのまま美しい姉と見詰め合う。 ・・・しばらくの沈黙の後。フェスタが口を開いた。 「綺麗な銀色」 「あ、はい。ありがとうございます」 「うん。お母さんの色・・・」 心なしか、どことなく。うっとりと言うフェスタ。アーンヴァルタイプ特有の、深みのある青い・・・僅かに潤んだ瞳。山吹色の美麗な髪が揺れ、神姫用のコンディショナーの淡い香りが鼻をつく。 屈託無い柔らかな笑みを口元に浮かべてはいるが、そこには天使というモチーフがそうさせるのか、不思議と艶やかな印象さえ見え隠れしていた。 「あ・・・のっ、姉様」 困ったようにそう言って顔を逸らそうとする。が、その瞳はそれを許してくれない。 「うん? 解ってるよ。今は・・・『ルクスの眼』、だよね?」 体躯は同じであり、既に半分押し倒される形になりながら。しかし、そう言って相も変わらず嬉しげに微笑む姉。 (いえ。それは解ってないのです。ですから。そうではなくて) そう言えば良いのだろうか。他の神姫との関わりが少ないルクスはどうすれば良いのか迷っていた。 もっと良く見たいのか、更に近づけられる顔。 整った目鼻が、ルクスの視界を覆う。 「・・・ぁっ」 思わず声が漏れてしまった。普通のアーンヴァルよりも僅かに血色が良い肌、仄かに薄桃色が差した唇は、今や触れるか否かの所にある。そのまま届くほどの吐息。 「・・・っ」 流石に息が詰まる。無論、ここまで他の神姫と近く接した事は無い。 フェスタ自身は恐らく無意識なのだろうか? 恐らくは他の神姫ともスキンシップ的にこういう行為は取っているのかもしれないが、しかし・・・。 何かを言いたげに、しかし下手に口を開く事も出来ない距離の顔と唇。 それでも視線だけでも何とか逸らしつつ、顔を赤くしているルクスを見かねたのか。マコトが頭を抱えてフェスタを指で引き離した。 「そこまで」 「・・・あれ? なんで?」 少し離された場所に置かれて、今尚解っていない様子のまま。きょとんとしてフェスタはマコトを見上げる。 長く。失礼かもしれないが安堵に近い息を吐くと。ルクスはゆっくりと体勢を直した。 「抵抗しても良いからね? 困っているようだったし」 苦笑して言うマコトに、力なく笑い返す。 「いえ・・・」 そういう行為、こういう関係は。彼女は知らない世界なのだ。仕方ない。 ・・・。 『知らない』。 その単語が胸に突き刺さった。 「ん、そのままにしといても面白いのに」 笑っている主に思わず非難の目を向けながら。 マスター二人が飲み物と、軽食を取りに行くのを見送ると、フェスタはくるっとルクスに向き直った。先のこともあって、思わず身を引く妹に、彼女は気にせず問いかける。 「ねぇねぇ。ルクスは、バトルが好きなの?」 「・・・え」 突如として、意を介せぬ質問をぶつけられ。 姿勢を直しながら、しかし彼女は、ふっと宙に視線を漂わせた。 「あの」 心が、きゅっと締め付けられるような。感覚。 「うん?」 「・・・そう、です」 「?」 その。多少煮えきらぬ声調と、どちらとも取れぬ回答に首を傾げるフェスタ。 「いえ。あの、姉様のように。そのような・・・その」 神姫バトル。それは、確かに・・・嫌いではない。だが。 ルクスは自分の膝を抱き寄せた。そこに顔を埋めるようにして、姉から顔を背けた。 「・・・すいません」 いきなり身の置き場所が無いような想いに捉われ、小さく呟く。 「え、どうして?」 ルクス以上に、困ったような顔でフェスタはルクスを覗き込んだ。 「・・・」 姉は。周囲に笑顔を咲かせていた。 神姫バトル。 自分を磨き、アキの愛に答える為に戦う・・・手段ではない。戦う事が、不器用な自分が出来る・・・たった一つの行為。 自分が自分である事の確かな表現の場。アキのへの愛を形にする行為のステージ。 ・・・それに、迷いは無い・・・はずだった。 黙りこんだ妹に、フェスタもまた少しの間、口を噤んでいたが。その沈黙に耐えかねたのか。 「えっと、確か・・・強いんだよね? ルクスって。以前神姫ジャーナルで見たよ?」 「はい・・・あの。一応は」 高みに行きたい。しかし、その名誉を欲してはいない。 「・・・ルクス? どうしたの? さっきから変だよ」 はっと気付けば。四つん這いの形を取るようにして、姉が身体を近づけて来ていた。髪が柔らかく孕んだ山吹色の光が目の中に舞う。 「あ・・・いえ。バトルが強くても・・・余り自慢にはなりませんし」 しどろもどろに言うルクスに。フェスタは首を傾げた。 「そんな事、ないよ?」 そう言ってくれる姉の声が辛い。 彼女は思わず姉の姿を見ないように目を閉じた。 「ですが・・・私の瞳は、母様の瞳は。ターゲットスコープを覗く為に使われています」 姉は母より受け継いだ脚で、笑顔の花を満開に咲かせているのに。 自分は。 「姉様と違って、私は『母様の瞳』で・・・何をしているのでしょう」 自分は、そんな事しか出来ない。それしか出来ないんだ。 それしか知らない・・・何て不器用なんだろう。 膝に顔を埋めて下を向くルクスを、しばし疑問符を浮かべながら見つめていたフェスタは。 やがて妹の思う所を介したのか。はっとした表情を浮かべて。そして、思わず吹き出した。 「っ・・・あははっ」 きょとんとして、顔を上げる妹に。肩を竦めて笑いかける。 「ねぇ、ルクス?」 ぴっ、と。人差し指でおでこを押さえられ、くっと下を向いていた顔を僅かに上げられた。そのままフェスタは先と同じく、瞳の奥を覗くように顔を近づけてくる。今度もまた、逃げる事もかなわないまま、しかしフェスタも少し先よりは離れた場所で止まった。 「『ルクスの瞳』・・・でしょ?」 「?」 指を外し、そのまま彼女はルクスの真前に身体を起こすようにして、座り直した。 「バトルだからいけないの? ダンスだったらいいの?」 「え、いえ。しかし」 「何でダメなの? バトルの一番を目指す事。それの何が悪いのか、私は解らないよ」 自分が行っている行為は。他の誰の為にもならない。 自分の為だけ。自分とマスターの勝利以外、何も、誰の為にも・・・紡がないじゃないか。 そんな事を考えていると。フェスタは小さく笑った。 「ルクスは強くて。そんなルクスにようになりたい、って思う『武装神姫』が、きっといると思う。それは、決して嫌な事じゃないよ」 「・・・?」 思わぬ言葉に、ふっと。顔を上げる。フェスタは妹の、その美しい銀色の瞳を真っ直ぐに見つめてきた。 「前ね、『武装神姫である前に。神姫である事を自覚しなさい』って私、言われた事があるの」 「・・・神姫である事、ですか」 そうだ。 私達は神姫。武装をまとう以前にヒトのパートナーであるべき存在。 「だけどね? ルクス」 黙りこんだままの彼女に対し、姉は首を左右に振る。 「神姫であると同時に。武装神姫である事を忘れちゃ駄目だよ?」 目を見開いて、ルクスは姉を見つめた。 「私もバトルが好きだよ? それは嘘じゃない。強くないけど、きっとマコトのお陰で勝ててる」 「・・・」 バトルが好き。 「これが武装神姫だから、だとか。そうじゃないの。マコトと一緒に戦ってる。それが好きなの、きっと」 「『好き』、ですか」 その言葉に嬉しげに頷く。 「『マスターの気持ちに答えたい』。『マスターと一緒に戦って、勝ちたい』」 両手を広げて、胸の前に静かに重ね、フェスタは自分にも言い聞かすように言った。 「だから、戦う技術を高めたい。強くなりたい・・・あの人の笑顔の為に。『武装神姫』なら、きっと一度は考えると思う」 『武装神姫』。 オーナーの意志に従い。武装し、戦場に赴く神姫達。 主の誇りを背に背負い。自分の想いを旗として掲げ。 負けたくないと思う瞬間。武装神姫が武装神姫である証。 誰もが求める、その先の世界。 「そう考える神姫達が「あんな風になりたいな」って。ふっと想う時・・・」 想いが生まれ出るその時に。ふと、顔を上げる場所。 その上の高み。 「その視線の先にルクスが立っていたら、それはとても『ステキな事』だと思うな」 「・・・」 それは嘘じゃない。 バトルが好きだから。 そこが。ずっと、マスターと駆け抜けてきた場所。どんな時も。あの人の愛が燦々と。降り注いでいた場所。 その場所で。誰かが続く場所で、想いを受け止める。 未来に繋げる、次の誰かの視線の先で。 あの人の愛を。 ・・・笑顔に換える事が出来る場所だから。 「姉様・・・」 ぽつっと呼ぶ。 「うん?」 美しい髪を揺らせて首を傾げる姉の顔を見て、ふと気恥ずかしくなり、ルクスは顔を赤くして下を向いた。 「あ、すいません。その」 「ふふ」 (・・・そうか) そうだ、うん。好きだったんだ。 武装神姫として、マスターと共に戦ってきた。その事が、何よりも好きだった。 だからこそ。誰よりも。高みに行こうとしていた。それしか出来ないのではなく。 それが自分自身を、一番輝かせる場所だった。 フェスタは優しく笑いかけた。 「頑張ろうよ。一緒に」 「・・・姉様と?」 彼女は強い意志を秘めた視線で、強く頷いた。 「私も、好きなダンスで一番を取るつもりだから。・・・好き、誰にも負けたくない。その想いを叶えたい」 きっと姉もまた自分と同じ。 ただ、自分とは歩む道が違うだけで。その、誰もを幸せにする舞踏で。 「きっと、きっとマコト様と、姉様なら。一番になれます」 嬉しくなり、笑顔でそう言うルクス。フェスタも笑い返す。 「ルクスもね」 「姉様・・・」 もう、一度。今度は言えるはずだ。 「うん」 「・・・ありがとうございます」 ・・・。 すっくと立ち上がると、フェスタはマコトが置いて行ったケータイを開けて、何やら操作しはじめた。 そのまま何事かと見ているルクスに背越しに声をかける。 「ねぇねぇ? 踊ろうよ、ルクス」 「は・・・?」 微笑みを浮かべて振り返る姉。手を後に回し、山吹色の髪を整えながら。 「いいよね?」 「いえ、しかし。私は・・・そんな、その。あの」 脈絡も無く言われて、彼女は慌てて手をぱたぱたと振る。 ダンスなど、全くやった事も無く。余り見たことさえ無い。 「大丈夫だって。リードしてあげるからっ」 そんな事を気にする様子も無く、フェスタはとっとっ、と脚で拍子を整えながら真っ直ぐに近づいてくる。 「いえ、ですから・・・」 引き攣った表情を浮かべていると、ケータイのミュージックプレイヤーから伴奏が流れ出した。 あぁっ。あんなに大きな音量で。 「うん? 気にしないで? 次の機会にルクスからバトルを教えてもらうから、それでお相子。遠慮しないで」 そう、こちらの意を全く介さぬ事を言って。フェスタはこちらに手を伸ばす。思わずルクスが手を出してしまうと。 すっと指を絡めて、ほとんど力がこもっていないのに、そのまま指だけで、立ち上げられた。 (!?) 唖然とするヒマさえ与えてくれない。 任せて? と小さく呟きながら。フェスタは妹を軽く引き寄せて、その腕を自分の腰に回させるようにして抱かせた。 已む無く、そのしなやかな胴に手を回し、姉を抱く形になってしまうルクス。普段、銃を持ち慣れている彼女にしていれば、そこは余りにも華奢で、おっかなびっくり触ってしまう。 それがくすぐったかったのか。フェスタは少し身を捩った。 「あの・・・姉様。私はダンスなど、出来は・・・」 一応の姿勢は取らされたが。そのまま困ったような顔を浮かべる彼女に。 姉は妹の腕の中でくすくすと肩で笑い、その臙脂色に近い髪に優しく指を通す。 「大丈夫。きっとルクスなら『見える』はずだよ?」 そう言って一度、眼を瞑り。 こつん、と、おでこ同士を付けて。 「私も。姉さんの『声』を、この『脚』が知っていたから・・・」 何気なく口にしたその言葉に。ルクスは瞳を丸くした。 (・・・え?) 音楽の主旋律が始まった。フェスタがくるっと回りながら腕から抜け出て、そのままルクスの手を取ると。ドレスの裾を持ち上げる仕草をしながら一礼をする。 ことん。 姉が爪先でテーブルを叩く音と共に、視界に音が舞った。 (・・・) 自分は足運びも知らない、手の動作も知らないはずだ。 しかし・・・明確なリズムが体に伝わり。そのまま音が引き込む流麗な流れに身を任せる。自然と、手が姉を導くように、そして脚が姉を追う様に動いていく。 テンポの良い音楽が耳を通り抜け・・・そして、何よりもその『眼』に届く。 身体がフェスタに誘われるように、風の流れるままに運ばれていく。姉は嬉しそうに、ルクスの腕で遊ぶかのように身を舞わせた。 と、たん。た・・・たたん 二人がテーブルというステージの上・・・刻んでいく二つのステップの音。 その水無き水面に描かれた小さな波紋がやがて一つになるように。フェスタが自分の中に重なっていき、意識が広がっていく。 (・・・姉様が刻むリズムが、見える) 銀色の瞳がはっきりと。自分の腕の中で舞うフェスタを捉えている。 妖精か、いや。天使か・・・軽やかに、優雅に反らされた腕、そして『脚』。そう。その脚は、元々はこの眼と同じ持ち主の元で・・・。 (・・・母様・・・) しなやかに、ゆったりとした音の流れに身を抱かれて楽しげに踊るフェスタ。その美麗なる肢体を舞わせる可憐なる姉の脚から・・・溢れるほどのリズムが流れ出し、瞳を通してルクスに届く。 それに従い、身を波にただ託して。 彼女達は、互いに互いが誘われるように舞った。 やがて、音楽が静かにフェードアウトし。妹をリードしながら踊っていたためか、随分と疲れたような・・・だが、優しい表情を浮かべたフェスタは上体を、とさりとルクスの胸に任せた。 「・・・大丈夫ですか? 姉様」 いつしか。肩の力が知らず抜けていた。 「うん・・・」 その、明るい暖かな銀色を湛える、透き通る瞳を下から覗き込むようにしながら、フェスタは嬉しげに微笑む。 ・・・と、何かに気付き。ルクスの背中に回した手の指で、つんつんと叩いた。 「ルクス。笑顔笑顔っ」 「?」 ふっと顔を上げれば、気付かぬうちに出来ていた人だかりから、拍手の雨が彼女達に降り注いだ。フェスタは慣れた様に、妹に抱かれながらにこやかに手を振っているが。 当のルクスはどうして良い物かと困惑するだけであった。 「いやぁ、ビックリした。可愛かったよ?」 「・・・」 無言で、顔を首まで真っ赤にして。 「うん、ダンスの達人ってのは、ダンスの相手も達人にしてまうってのは聞いてたんやけど」 「・・・物の見事に、男性用のダンスじゃないか」 アキの賞賛を受けながら、縮こまるルクスを見ながらも。 苦笑しながらマコトはそう言って、フェスタのおでこを突付く。 「あは、ごめんごめん」 頭を掻きながら、しかし悪びれる様子は無くフェスタは笑った。 「・・・アキさん、今から予定は?」 ふっと、マコトがアキに顔を向けた。 「ん? いや別に。ホテル泊まって、明日アキバ寄って・・・帰るつもり。何? ナンパ?」 「いや。そうじゃなくて」 苦笑を一度浮かべたが、すっと真顔に戻って腕時計に目を落とす。 「今から行けば。閉店までに間に合うかな、って」 「間に合う?」 「あのね・・・」 フェスタが言おうとした言葉を。ルクスが引き継いだ。 「もう一人・・・姉様がいるのですね?」 あれ? 言ったっけ。と言いたげに、不思議そうな顔を向ける姉。 「それって・・・そういうこと?」 「はい。少し遠いのですが。よかったら」 「行きます」 はっきりと。 「・・・会いたいんです。マスター」 アキは常では無い程に。自身の意志を明確にするパートナーに少し驚いたような顔を浮かべていたが。やがて笑って答えた。 「ん、ウチもえぇよ。案内してくれる?」 ・・・。 『神姫』として、そして『武装神姫』として。其処を目指そうとする神姫がいる。 その道を真っ直ぐに、瞳は見つめ、脚で歩き続けて。 ・・・いつしか其処に達しようと迷い無く。 「角子さん? ニックネーム?」 「はい。そう呼ばれてます」 向かい合う座席に座り、マコトとアキが話をしているのを聞きながら。窓の縁に立ち電車の中から後方に飛んでいく風景を見やる。 「その神姫の名前は、何て言うの?」 アキの問いに。マコトはしばらく腕を組んで何かを考えていたが。 「いえ。それは・・・。本人から、本人の声で聞いてください」 「?」 ルクスは冬故に早くも夕暮れ迫る地平を眺め、ふっと気付き目をやると、隣にいつしかフェスタが立っていた。 彼女らが進む道に吹く『風』は。時に厳しく打ちつけようとも、想いを紡ぐ力に変える。 強い意志を持って高みへと。誓いを運び決意と共に。 銀色の瞳に宿る強い意志。彼女はそのまま暮れゆく空を見上げた。 (母様の眼を受け継いだ、私である事) 私自身が『武装神姫』である事を恥じたりはしない。臆したりもしない。 この道を歩み続けて、まだ見ぬ神姫達が上を見上げたとき。そこに自分の姿がある時。それを誰かが追いかけるとき。 そして・・・。誰かの『瞳』に私が映るとき。 それは、きっと。紡がれていく強い想いとなるだろう。 姉が小さく声を上げた。つられて見やれば、鯨を思わせる大型飛空船が遠く・・・雲かかる夕焼け空にその身を煌かせ、のんびりと上天を泳いでいく。 「・・・」 水晶を思わせる銀眼が、金色の光を包み込んだ赤い空を照り返していた。 フェスタが、ふっと思い出したように顔を前にすると、ルクスに近寄り一言だけ『ある言葉』を耳打ちした。 その言葉に驚いたような表情を浮かべ、やがて小さく、しかし強く頷く。それを見て、フェスタも嬉しげに頷いた。 姉妹はまだ見ぬ場所へと、その風に乗せ、己の姿と想いを馳せていく。 確かに背を押す、その小さな胸に抱える風がある。 吹き渡る空の名は未来・・・その風の名は。 夢。 第八幕。下幕。 第八間幕
https://w.atwiki.jp/busoushinki/
したらば版武装神姫@wikiへようこそ このwikiはしたらば版武装神姫板用のwikiです 各スレで出てきた意見、アイディアを掲載していきます 誰でも編集できますので気軽にver,upさせて下さい wikiの使い方や編集方法などはコチラをご覧下さい @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 @wiki ご利用ガイド よくある質問 無料で会員登録できるSNS内の@wiki助け合いコミュニティ @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください @wiki助け合いコミュニティの掲示板スレッド一覧 #atfb_bbs_list その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン @wiki便利ツール @wiki構文 @wikiプラグイン一覧 まとめサイト作成支援ツール バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、メールでお問い合わせください。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2112.html
ウサギのナミダ ACT 0-4 ■ 朝。 わたしが目覚めると聞こえてきたのは、すぐ右手にあるパソコンのキーボードを叩く音だった。 キーを叩く人は遠野貴樹。 きのう、わたしのマスターになった人。 「お……おはようございます……」 「おはよう」 おずおずと声をかけたわたしに、あっさりと、そしてどこかそっけなく返事が来た。 シーツ代わりのハンカチを引き寄せ、マスターになった人の顔を見つめる。 端整な顔立ち、だと思う。 細いフレームの眼鏡をかけ、理知的な印象だ。 それが口調とも相まって、少し冷たい印象を受けるけれど。 どんな人なのだろうか。 コーヒーカップを口元に運ぶ横顔。 いままで、わたしが会ったお客さんたちとも違う印象。 真面目そうで、理知的な瞳は、いつもまっすぐにわたしを見る。 彼の指の動きが止まると、その瞳がわたしを映した。 「よし、行くか」 「えっ……?」 キーボードを叩いていた手が、わたしに伸ばされてくる。 わたしは身構える。身体を固くしてしまう。 いや、すくんでしまうのだ、恐怖に。 わたしに伸ばされる手は、いつだって、酷いことの予兆だったから……。 わたしの様子を不審に思われたのか、手は一瞬止まった。 けれど、すぐに動き出してわたしを包み込むように掴むと、そのまま彼の胸元へと移動する。 そして、わたしはシャツの胸ポケットにおさまったのだった。 ……酷いことなんて、何もされなかった。 それが当たり前だと思えないほど、わたしは酷いことの方に慣れすぎていた。 □ 身体をすくませ、何かを耐えるように掴まれるのを待つ姿には、正直へこんだ。 俺が「何もしないから、安心しろ」と言い聞かせても、おそらく態度を変えることはないだろう。 この身をすくませる態度は、ティアが過去にされてきた仕打ちに起因するのだと思う。 だとしたら、言い聞かせるだけでは変わらない。 ティアが俺を本当の意味でマスターと認めてくれない限りは。 だからその時を待ちながら、辛抱強く待つしかないのだった。 俺は家を出ると、ゆっくりとした足取りで歩き出した。 外は快晴。早朝の爽やかな空気が気持ちいい。 俺はこの時間に散歩をするのが好きだった。 それが自分の神姫と一緒なら、きっと楽しいことだろう。 俺のひそかな夢の一つだった。 ■ マスターのシャツのポケットは、わたしにあつらえたようにちょうどいい大きさだった。 リズミカルな振動は、マスターが歩を進めている動き。 わたしは少し顔を出してみる。 ……まぶしい。 マスターの部屋も、とても明るいと感じたわたしだったけれど、外の世界はさらに光に溢れていた。 色に、溢れていた。 世界を覆う空は、見たこともないような青だった。 建物の壁は、その建物ごとに何種類もの色があった。 たくさんの植物が道に沿って植えられていて、それもただの緑色ではなかった。 一本の木に、たくさんの緑色が集まって、一つの緑に見えている。 色とりどりの自動車、道行く人の洋服もカラフル。 なにより、全ての色がはっきりとしている。 光が、溢れている。 木々が揺れる。 顔を出したわたしの頬を、やわらかな空気が撫でていく。 これが、風? マスターはゆっくりと歩いていく。 その胸元から見る世界は、わたしが初めて目にするものばかりだった。 やがて、マスターとわたしは、公園へとやってきた。 公園というものを初めて目にしたわたしは、心を奪われてしまった。 見たこともない大きな空間には、色とりどりの緑色が溢れかえっていた。 天井はどこまでも続く空の青。 現実の場所とは思えない。 いままで、わたしが知っている場所とはあまりにも違う。 わたしは知らなかった。想像もしていなかった。 世界は…… 「広いですね……」 わたしは思わず呟いていた。 □ 「ああ、この公園は、このあたりでは一番大きい」 なんて答えた俺は、後悔することになった。 ティアの呟きにそんな意味が隠されていようとは思いもしなかった。 ティアの真意を知るのはずっと後だったが、何というトンチンカンな答えをしたのだろう、と今でも後悔に苛まれる。 俺にとってはいつもの散歩道でも、ティアにとっては初めて見る外の世界だったのだ。 そんなティアの感傷を想像だにせず、俺は公園の遊歩道を歩いていく。 ■ マスターの歩みには迷いがなかった。 まるで自分の家の中のように、歩いていく。 マスターにとっては、何度も来た場所なのだろう。 ふと、疑問に思って、思い切って、本当に思い切って、マスターに尋ねてみた。 「マスター……今日は、どこへ行くんですか?」 おそるおそる見上げると、マスターは何故か驚いたような顔をしていた。 「どこへって……どこへも行かないぞ?」 「……え?」 「あえて言えば、ここが目的地か……」 ここが目的地だというのに、マスターはひたすらに歩き続けている。 マスターは一体何をしに来たというのだろう? このときの記憶を思い出すたびに、わたしは恥ずかしさにいたたまれなくなる。 目的などあるはずがない。 マスターは散歩をしに、この公園までやってきたのだから。 こうして歩いていること自体が目的だなんて、あの時のわたしには思いも及ばないことだったのだ。 だけど、マスターはこう言ってくれた。 「そうだな、おまえに、この公園を見せたかったんだ」 このときのマスターの声は、この上もなく優しかった。 散歩から戻って一休みすると、マスターはパソコンに向かってなにやら作業をはじめた。 おそるおそるディスプレイを覗いて見ると、武装神姫の情報サイトをチェックしているみたいだった。 でも、わたしにはどんな情報をマスターが欲しているか分からない。 マスターは、時折腕を組んで考えては、マウスを操作し、次々にサイトをチェックしていく。 マスターは情報収集に夢中で、わたしを気にかけない。 わたしは手持ちぶさたになった。 マスターのパソコンから音楽が流れてきている。 マスターは作業中、音楽データをかけっぱなしにしているのだ。 いくつもの曲が聞こえてくる。 あ、わたしも聴いたことのある曲。 お店で音楽を聴く機会は、踊りをするときだけだった。 お客さんのための踊り。 でも、音楽に乗せて身体を動かすことは、わたしの数少ない楽しみの一つだった。 自然と、踊りたいという気持ちがわき上がってくる。 マスターはサイト検索に夢中。 右手に広がっている作業用のスペースは、わたしが踊るのには十分すぎる広さだった。 わたしは立ち上がり、リズムを取る。 そして、曲の途中から動き出す。 身体はすんなりと、覚えていた振り付けを再現する。 曲に合わせて踊る、踊る。 すぐに夢中になる。 周りのことなど意識せずに踊る。 お店にいた頃は、そうでもしなければ踊り続けることが出来なかった。 その習慣が出てしまったのか、今も意識が踊りだけに向いている。 ……そして、わたしが踊り終わったとき、こちらを向いてわたしを見つめているマスターと目があった。 気が付かなかった。マスターがわたしを見ていることに。 わたしはマスターの命令もなく、勝手に踊ったりして、しかも、マスターの作業の邪魔をするなんて……なんてことを……! 「あ、あ、あのっ、そのっ……わ、わたし……ご、ごめんなさ……」 「もう一回やってみろ」 あわてて謝ろうとするわたしにかけられた一言は、意外なものだった。 「曲は同じなら踊れるか?」 「えっ? ……あ、は、はい……」 マスターはマウスを簡単に操作する。 するとパソコンから、先ほどと同じ曲が流れはじめた。 わたしは曲のリズムに合わせて体を動かす。 再び滑り出すように踊り始めた。 でも、表情がこわばっていたかも知れない。手や足の先の動きがぎこちなかったかも知れない。 だって、マスターがじっとわたしを見つめていたから。 静かに、まっすぐに、踊るわたしを見つめている。 マスターの瞳からは表情は読みとれなかったけれど。 わたしは、なんだかとても恥ずかしかった。お店で踊ったどんな踊りよりも。 お客さんのあざとい視線を受けているときよりも。 マスターの視線は、わたしの全てを見透かしているようで。 やがて曲が終わり、わたしは静かに踊りを終える。 マスターを見ると、視線はディスプレイの方を向いていた。 「やはり、バランスがいいな」 「は……?」 「思った通りだ。おまえはバランス感覚が平均よりもずばぬけている」 「はあ……」 マスターの言葉がぴんとこなかった。 わたしが踊っている間、マスターはわたしのデータを何かモニターしていたようだけれど、それが何なのか、詳しいことは分からない。 「うん……やっぱりこれにしよう」 「何を……ですか?」 「おまえの装備だ」 マスターはわたしの方にディスプレイを向けた。 ものすごい勢いで、ジャンプ台から飛び出した男の人。 画面から飛び出してきそうな勢いの動画が表示され、わたしは思わず驚いてしまう。 画面の中の人は、車輪のついた靴を履いていた。 道でない場所さえ、自由自在に、駆け回り、飛び跳ねる。 「ローラーブレード……」 「知っているのか?」 「あ、はい……実際のものを見るのは初めてですが……」 一般常識として、メモリには記録されていた。 でも、こんなに激しく、華麗に、そして自由に動くものだとは初めて知った。 「おまえ用の装備として、武装神姫向けにアレンジしたローラーブレード型の脚部パーツを作ろうと思う」 「え……でも……」 そんな装備は、公式の装備にはないはずだった。 いや、移動用の車輪付脚部パーツや、トライク型に代表される地上用の神姫の装備には、それに近いものはある。 だけど、さっきの映像のように、小型で高速機動が可能な地上用装備は、少なくともわたしのメモリに登録されている武装神姫公式装備カタログの中にはない。 「その装備では、公式戦には出場できないのでは……?」 「別に、公式戦に出たいわけじゃない」 マスターはこう言った。 「俺は、まだ誰も見たことのない様な、ただ一人の武装神姫を作りたい」 ただ一人の武装神姫。 「それが可能なら、公式大会に出られなくてもいい。どこかのゲームセンターに、誰もしない戦い方の神姫がいる。そんな風に言われるのが、俺の夢だ」 マスターの夢。 「おまえは、踊るように、舞うように、美しく戦うんだ。ギャラリーも、対戦相手のマスターも、神姫も。おまえの戦いぶりで魅了することが出来たなら……」 魅了することが出来たなら……。 「最高だな」 わたしは、夢の中にいるような気分だった。 わたしは、マスターの夢を実現するために、ここにいる。 ここにいて、マスターのお手伝いが出来る。 それはなんて素晴らしいことなんだろう。 「で、でも……わたしなんかで、大丈夫でしょうか……?」 「だから、『わたしなんか』って言うな」 怒られてしまった。 「苦労はするだろう。練習も膨大な時間が必要になる。だが、それでも、俺は俺の夢を叶えたい。……おまえには苦労をかけることになるが。なにしろ、ベースとなる戦闘プログラムもないからな」 「いいえ……! わたしは、わたしでよければ、がんばりますっ」 わたしは、はじめて……夢を持った。 マスターの夢を叶えること。 誰も見たことがないような、踊るように、舞うように戦う武装神姫。 この日から、わたしの武装神姫としての修行が始まった。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2624.html
類は神姫を呼ぶ 著・輝彦 初めまして。 輝彦(てるひこ)といいます。バトマスmk2で武装神姫にハマってしまい、このSSを見つけて、自分も書いてみたいと思った次第です。 /概要 人に個性があるのなら、神姫にも個性はある。 そんな神姫と人たちが織り成すドラマのようなお話……になればいいな。 ○バトルの設定はMighty Magic様よりお借りします。 ○全三章予定。主人公は章ごとに変えていく方針です。別の章ではサブとかモブとか間接的とかで登場します。 ○武装・バトルなどは妄想、想像でのフィクションでお送りします。 ○随時、加筆修正していきます。ご了承ください。 ※話が思うように進まない。バトマスmk2のDLC神姫の育成しながら練り直してきます。 第一章 戦えない神姫 ・part1 ・part2 ・part3 ・part4 ・part5 ・part6 ・part7 ・part8 ・part9 ・part10 ・part11 ・part12 ・part13 ・part14 ・part15 ・part16 ・part17 ・partEnd ~姉妹~ 第二章 琥珀の神姫 ・partⅠ ・partⅡ 今日: - 昨日: - ご感想、ご意見、あればなんなりとお願いいたします。 テストです。 -- 輝彦 (2012-02-17 20 05 32) 投稿ペースが早いですね! 楽しみに読ませていただいております。 螢斗とシオンの行く末や、新たな女性マスターの登場に目が離せません。今後の展開を楽しみにしております。 -- トミすけ (2012-02-19 22 42 41) トミすけさん、ありがとうございます。感無量です。書き溜めてあるのがなくなるまではこんなペースですので。 -- 輝彦 (2012-02-20 00 07 57) 切り口が心理的で新鮮味溢れてますねぇ〜如何なる展開を魅せて頂けるか楽しませて頂きます -- ナナシ (2012-02-20 17 01 08) ナナシさん、感想ありがとうございます。神姫をバトルだけでなく物語として成り立つようなストーリーを考えてたらこうなっていました。 -- 輝彦 (2012-02-20 18 01 16) こんにちわ。作者の輝彦です。一章が終わり次は二章にいきます。予定では次の主人公は口の悪いオーナーと眼帯の軍曹神姫です。 -- 輝彦 (2012-03-01 08 59 12) テラ根性!一気に最後まで読ませていただきました。次も楽しみにさせて頂きますw マリーセレスにも出番があるとうれしいなぁ。。 -- 通りすがりの紳士 (2012-03-01 09 03 26) 通りすがりの紳士さん。ご感想ありがとうございます。マリーセレスは好きな神姫の一つなので出す予定ではいます。 -- 輝彦 (2012-03-01 09 08 31) 原因云々はさて置き感情の爆発による奇跡の復活魅させて頂きました、可愛さ余って憎さ百倍だったお姉ちゃんと家族に戻れて良かった良かった・・・第二部も楽しみにさせて頂きます -- ナナシ (2012-03-03 16 13 19) ナナシさん。またご感想ありがとうございます。無理矢理感は自分でもわかっています。アーティルは熱い展開があってなんぼかなと思いまして。 -- 輝彦 (2012-03-03 16 19 22) 一話ごとの区切りがうまく、いつも続きが気になります。WKtK -- IBIS (2012-08-07 12 06 05) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/11.html
小さな冷たい鉄の塊を、ドアノブに差し込む。 がちゃり、と軋んだ音がする。 家の中は、暗い。 広さが重く押しかかる。 誰もいない家。わたし以外、誰もいない。 お父さんもお母さんも仕事でいない。帰ってくるのは夜遅く。 だから、私はひとりぼっち。 小学校でも、家でも、どこでも。世界でひとりぼっち。 テレビをつける。 テレビの光が、部屋を照らす。 流れてくる番組は、小さなロボットが戦うおはなし。武装神姫、といっただろうか。 クラスの子が自慢していたのを覚えている。 私には到底買えそうにない、高価なおもちゃだった。 テレビの中で、女の子とロボットが笑顔で話をしている。 ――――無性に、腹が立って。 わたしは、テーブルの上においてあった花瓶をテレビに投げつけた。 くだらない。 つまらない。 なにが、ともだちだ。ロボットのともだち? ふざけてる。 そんなもの――――どうやったって、わたしにはこないのに。てにいれられないのに。 「そんなことないさ」 「!?」 わたしは驚いて振り向く。誰もいないはずなのに。 そこには、黒い服をきた男の人がいた。 泥棒? いそいで警察に―――― 「おっと、怪しいものじゃない――といっても説得力がないかな。 でも、君に危害を加えるつもりはないよ。 君にお友達をプレゼントしにきただけのお兄さんさ。 そう、僕が何者かなんてそれこそ無価値だ。大切なのは――――」 その人は、手に持った箱をテーブルに置く。 武装神姫のバッケージ。 「君のために、ここに君の友達を連れてきたということだけ」 箱が開く。 その中にいた小さな天使が目を開ける。 かわいらしく、美しく、可憐な、天使。 「おはよう。あなたが、私のマスター?」 天使が私を見る。 違う。 マスターなんかじゃない。 わたしは―――― 「いいえ…ともだち。わたしの、ともだちになって」 わたしは。 この天使に魅入られたかのように近づく。 そう、そうなんだ。天使が来てくれた。 わたしはもう――――ひとりじゃない。 少女と天使の出会いを、男は祝福する。 おめでとう、と。もうきみはひとりじゃない、と。 亀裂のような笑みをその顔に軋ませ、男はふたりを祝福する。 その天使は、口元に笑みを浮かべていた。 酷薄な、悪魔のような微笑を。 神姫狩人 第二話 悪魔のような天使の笑顔 武装神姫バトルサービス、小学生の部。 子供たちの「友達」である武装神姫を傷つけて悲しませないために、小学生の部はその大半が電脳仮想空間によるオンラインバトルで行われることが多い。 明日香が今回見物に来ているバトルステージも、その例に漏れずにオンラインバトルであった。 「つまんない」 明日香がデパートの特設巨大モニターを見ながら、頬づえをついてつぶやく。 「そうか? それなりに面白いとは思うが」 「でもねー。いくらリアルに迫っていても所詮は仮想データですよ。 なんというかこう、ぶつかり軋む鉄やプラスチックの音とか、そういう臨場感がっ」 「子供たちの戦いにそんなモノを求めるな頼むから」 「求めてませんよーだ。だからつまらないって言ってるんじゃないですか。 仕事じゃなきゃ、とっとと帰ってます」 「仕事…ね。この子供たちの戦いに、ボクらの仕事があるっていうのか?」 「ええ。次のカード、よく見ててください」 そう明日香が視線でモニターを指す。 天使型MMS『サマエル』 VS 犬型MMS『フェンリルβ』 「ボクと同じアーンヴァルタイプと…ハウリンタイプか。どちらを見ればいい?」 「見てればわかります」 そういっている間に、戦いが開始される。 子供の神姫だけあって、どちらも武装はほぼデフォルトである。基本セットの範囲内、そしてなんとか子供のお年玉や貯金で買える範囲の追加武装。 明日香たちが参加する一般の部の公式戦は、密かに行われる裏の非公式バトルでは間違いなく勝ち進むことは出来ないだろう。 そのはずである。だが―――― 「……明日香、これは」 「ええ、やはりマルコにはわかりますね」 マルコは目を見張る。 確かに武装やスペックは特筆すべきものはない。 あくまで、その単体のみでは。 「あのアーンヴァル…サマエル、といったか……あのチューンナップは」 「ええ。可能範囲内で、機体のシステムを最大限に行かせるチューンですね。 長く神姫にかかわり、よく識らないとあの絶妙な動きはできません。 ほら、あまりの出来のよさに、CGで追いきれてません。まあこれは主催側のミスでしょうが」 そう、確かにフェンリルβよりもその動きは明らかに格上だった。 ヒットアンドウェイの高機動で確実に相手の戦力を削いでいく戦い。 だが―――― 「それがどうしたんだ? 確かに強いが、ボクらが動く理由があるのか」 「ええ。経歴にそぐわぬ強さ。まあこれは、父親が金持ちでカネにあかして、なんていう場合もあるんでしょうけど、彼女の場合は両親共働きのごく一般の家庭。 加えて、家族親戚や交友関係にも、表だった神姫関連企業の影はありません」 「あきらかに不自然すぎる、と…?」 「ええ。そして……彼女と対戦した神姫たちに共通して、不審な行動が後に見られるようになってるんです」 「不審な行動?」 「簡単に言うと、言うことを聞かなくなる。動作不良が激しくなっている傾向が見られているようです」 「ふむ……それは確かに怪しいな。 つまり、その調査、そして調査結果いかんによっては非公式戦による撃破・回収が今回の仕事、か」 「ええ。子供相手ですから、気が進まないんですけどねー」 「確かにな。で、明日香。その彼女の名前は……」 明日香が答えるまでもなく、オペレーターがその名前を読み上げた。 『勝者、サマエルと…「氷雪恋(ひゆき・れん)」!』 「ここが、その子の家か」 夜。明日香の肩でマルコがいう。しかし…… 「さすがに不法侵入は拙いんじゃないのか、その法的とか色々と。正当性というものが」 「仕事という大義名分がありますから」 「だからといって、忍び込んでというのはちょっと」 「ああもう、だったらどうするっていうんですか」 「しっ」 マルコが明日香の口を押さえる。 そして恋の家の扉を指す。すると、ガチャガチャとノブが回り、恋がその姿を現す。肩には、サマエルの姿も見て取れた。 「これは…スシがネタしょってやってきた、ってやつですね」 「かなり違う」 「似たよーなもんです。何はともあれ好都合だとは思いませんかマルコ」 「油断しないように、明日香」 二人は、恋の後を尾ける。もし仮に、この行動がサマエルの秘密に関係あるのなら、何としてでも尻尾を掴まねばならない。 ……まあ、つかめなくてもやることは同じなのかもしれないが。 「デパート…?」 「昼間の、ですね。うーん…このパターンだと、ここの協会支部が丸ごと関わっている…ベタですけどね」 「結論を出すには早いだろう。ともあれ追おう」 「わかってますよ」 二人は恋とサマエルの後を追った。 「しかし……」 夜の無人のデパートというのは、とにかく、 「不気味ですね…なにか出そうです」 「とくに玩具売り場は、昼間と顔が違うな」 人形やぬいぐるみたちが、うつろな瞳で自分たちを見ているような感覚。 「……こんなところ早く出ましょうマルコ。私こういうの苦手なんですよ」 「キミにも苦手なものがあったなんてね。」 「失敬なことを言いますね、まったく。 さて……彼女はどこへ」 「武装神姫ブースの方、か……」 足を進める二人。 棚に並んでいる数々の武装神姫がそこにはある。 まだ起動していない彼女たちは、今はただの人形にすぎず、いや、彼女たちが「生きて」いることを知っている明日香たちから見たら、それはまるで死体が陳列されているかのような不気味さがあった。 「本当に…不気味ですね。早いところあの二人を探して…」 「誰を探してどうするって?」 明日香のつぶやきに、答える声があった。 「誰ですか!?」 「私? 私はサマエル。ずっと私たちを尾けていたのは、あなたたちね?」 その声は、特設モニターの上に腰掛けた神姫から。 くすくすと、鈴のような笑い声を響かせるその天使の姿に、明日香は言いようのない吐き気を覚えた。 「――見破られていましたか。 ええ、でもある意味手っ取り早いですね。 あなた達には不審な点が数多く見られます。おとなしく全てを吐いてくれれば悪いようにはしませんが」 「へぇ。じゃあ、吐かないって言ったら?」 「力づくで」 明日香の言葉に、マルコが翼を展開して宙に舞う。 「へぇ、やる気なんだ。 ねぇ、ならやっちゃってもいいよね、恋!?」 サマエルが笑う。その声に、モニターの下に立つ少女が、虚ろな笑顔で答える。 「うん。好きにしていいよ、サマエル…」 「ふふ、ありがとう、マイマスター」 サマエルもプロペラントタンクに火をつけ、飛翔する。 ――――おかしい。 違和感。明日香は恋の表情になにか、言いようのないものを感じる。 違和感はそれだけではない。 先ほどの吐き気。厭な空気。軋む空気。このデパート、玩具売り場に足を踏み入れてからの言いようのない視線。 何かが――おかしい。 「はあああっ!!」 その違和感をよそに、マルコはビームソードを抜き、斬りかかる。 サマエルもまた、ビームソードでその剣戟を受ける。 同型の天使同士の戦い。 確かに、サマエルは強い。しかしその強さは、あくまでもデフォルト装備に毛の生えた程度の武装、その機能を最大限に活かすチューンナップによって得られたものだ。 マルコのように、レギュレーションの範囲内とはいえ改造に改造を加えた武装神姫とは違う。 現に、サマエルはマルコの高速の剣を受け流すのが精一杯だ。 では、何だ。 何なのだ、この違和感、焦燥感、危機感は。 「マルコ! 早く決着を!」 長引かせては拙い。明日香の勘がそう告げる。 「何を焦っているの、お姉さん?」 恋が明日香に声をかける。 「せっかくなんだもん、もっと楽しみましょう。時間をかけて、ゆっくり、たっぷり、みんなで、楽しく」 歌うような語りかけ。 いけない。何かが――――拙い。 「あなた、自分が何をしているか、わかってるの…!?」 「うん。お友達が出来たから。サマエルが、つれてきてくれるの、お友達を。 私はもう一人じゃない。一人なんかじゃないの」 「? 何、を……」 つれてくる? 何の話だ。 明日香はふいに思い当たる。 サマエルの対戦相手のMMSの動作不良。 オーナーの言うことを聞かなくなる。命令無視。命令無視? 違う。まさか。 聞かなくなるのじゃない、もし、仮に。 『他の誰かの命令を聞く』のだとしたら―――――― 「だから。私はもう、ひとりじゃない。こんなに、友達がいるの」 瞬間、明日香は理解した。 先ほどからの違和感。視線、気配の正体を。 恋とサマエルを見守り、明日香とマルコを監視していた―――― 無数の武装神姫。 「マルコ! 逃げなさいっ!!」 明日香が叫ぶ。だが、間に合わない。 マルコの背をハウリンタイプの砲撃が襲う。フェンリルβ。昼間、サマエルと戦った神姫だ。 「ぐあっ!」 続いて、何体ものアーンヴァルが襲い掛かる。砲撃で体勢を崩したマルコは避けることができず、手足をアーンヴァルたちに捕らえられる。 くすくす。 くすくす。 くすくす。 くすくす。 笑い声が木霊する。 「な、なんだ、これは……っ!?」 マルコが叫ぶ。何体もの同型MMSに羽交い絞めにされ、動けない。 「マルコっ!」 明日香が走る。もうこんなのはバトルではない。非公式バトルとはいえど、これは明らかに武装神姫の戦いより逸脱している。 なんとかマルコを助けようとし―――― 「うあっ!?」 足に激痛。明日香はそのまま勢いを殺せずに倒れる。 そこには、ストラーフタイプが明日香の足に剣を突き立てていた。 「痛っ…! こ、このぉっ!」 力任せに振り払う。だが、MMSはその数を増やすばかり。 「どう? 私の友達。サマエルがつれてきてくれた、わたしのおともだち」 「あなた……!」 「そして、お姉さん、あなたも、お友達になろう?」 恋が笑う。明日香は気づいた、そう、とっくにこの少女は正気を失っている。 おそらくは、操られているこの武装神姫たちと、同じように。 「くすくすくすくす。そうよ、ご名答。でもね勘違いしないで。恋が自分で望んだの」 サマエルが、明日香を見下ろして笑う。 「……あなたはっ! この子たちに、何をしたっ!!」 「ねぇ、知ってる? AIの共鳴現象って」 聞いたことはある。 先日、とある神姫が感情を暴走させた。そしてそのバグは、周囲の神姫の感情回路にも影響を及ぼしたという。 ――――まさか。 「そう、そのまさか。 私はね、大して強くもないわ。だけど、AIの電気信号を増幅して共鳴させて、ほかの子たちを操ることが出来るの。 共鳴現象を自動的に引き起こして操作する。 そしてね、人間にも応用できるの。だってそうでしょう? 人間の思考や感情も、つきつめていけば脳内で複雑にあまれた電気信号なんですから。 だから、私の声で、私の歌で、干渉できる」 「さっきからの吐き気や違和感の正体は――っ」 「ええ、私からの電波干渉。 あなたみたいに鈍くて意地汚い人間には効き目なんてあまりないけど、それでも恋みたいな素直な子には、よく効くの」 「サマエル…っ! あなた、自分が何をしてるかっ!」 「ええ、わかっているわ。だから何? 私はね、そのために生まれた武装神姫。 だから、やらなきゃいけない事を自分の意思でやるだけよ。 そしてね、もうすぐあなたの神姫も、私の友達になるわ」 「…! マルコっ!」 明日香がマルコへと叫ぶ。 マルコは、たくさんの神姫に囲まれ、押さえつけながら、必死に耐えていた。 洗脳。干渉。侵食されるAI。共鳴するココロ。増幅される憧憬。消されていく想い。 サマエルの声が。マルコに浸透していく。 「私の名前は、サマエル。神の毒と呼ばれる天使の名前。 私の毒は甘美でしょう? 一度味わえば、抗いたくなくなるほどに。 そうしてあなたも私たちの友達になるの。恋が、新しいマスターがあなたをかわいがってくれるわ。 そう、だから考えることはやめましょう? そして何もかもを投げ出して、楽になるの」 ――――――――――――――い。 ――――――――――――さ、い。 「さあ、私の声を聞いて、そして――」 うるさい。 黙れ。 これ以上、ボクを汚すな。ボクを踏み躙るな。 痛い。苦しい。消えてしまう。ボクの今までがなくなっていく。 掴むから苦しい。なら手放せば楽になれる――? それこそ、ふざけるな! 「黙れぇぇぇっ!」 マルコが絶叫する。 「何もかも忘れて楽になる? ふざけるな。 明日香のことを忘れて、楽になるぐらいなら――――!!」 手に力が入る。ビームソードに再び光が灯る。 「煉獄の苦痛の方が、億倍もマシだっ!!」 光の氷柱。シャイニングアイシクル。神姫ハンター用の装備として用意された、回収対象のAIを強制シャットダウさせるための電磁兵器。 それを、マルコは、自らに突き立てた。 「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!」 放電。紫電が疾しる。 「マルコーっ!!」 その電撃に、周囲を囲っていた神姫が弾き飛ばされる。 「馬鹿な、自殺を選んだっていうの!?」 サマエルが空中で体勢を立て直す。 だが、マルコは――肩で息をしながら、全身をバチバチと放電させながら、それでも立っていた。 「何――!?」 そう。 サマエルが電気信号によってAIを狂わせ、支配下に置くのなら。 それ以上の電気によって、その電気の毒を洗い流せばいい。簡単なことだ。 「マルコ、あなた…!」 明日香が叫ぶ。そう、言葉では簡単なことだ。だがそれを実行に移すとなると―――― 「…まったく、本当に痛いな…ああ、すごく痛い。ボクとしたことが、今にも泣き出したくなるぐらいに…… でも。 とても、いい気分だ」 シャイニングアイシクルの出力を調整。 AIをシャットダウンさせるかさせないかのギリギリのパワーの、超圧電流。 それを自分に叩き込み、気付けにする。言うは簡単だ。だが、その苦痛はいかほどのものか。 「――――狂ってる。あなた、正気!?」 「…お前には言われたくないな。 ああ、確かに狂ってるかもしれないさ。何故ならばね、教えてやるよ」 わき腹に突き立ったビームソードを引き抜く。オイルの血が流れ出る。それをものともせずにマルコは剣を構えた。 「神の毒、と言ったな、お前は。天使の名からとったのか。 ああ、ボクの名前も天使から由来している。 だからね、狂っているのは当然かもしれないさ。何故なら、ボクの名の由来は――――」 飛ぶ。剣を振るう。サマエルは反応できない。サマエルの右腕が薙がれ、落ちる。 「第七座天使(ソロウンズ)にして、堕天使、マルコシアス。それがボクの名の由来さ。 堕天使、つまり悪魔といっても同じだ。ほら、ならば確かに狂っていると言われても仕方がない!」 返す刃で、サマエルの片翼を切り落とす。 「きゃああっ!!」 「――だがな。それでもなお、捨てられぬ正義がある。 天より堕とされ狂気に沈もうとも、決して穢れないものがある。 ――――お前は、それに踏み入った。 ああ、初めてだよ、サマエル。 初めてボクは、明確な殺意を抱いている」 そう、許せない。 自分たちだけではない。 子供たちとの、オーナーと神姫の心の繋がりを、この敵は踏み躙ってきた。 毒で心を殺し、操り人形にしてきた。 怒りだ。 その怒りが、激痛に耐えさせた。最後のところで自らを保たせた。 「武装神姫は、人と共に在る。そのためにボクらは生まれた――」 「ひ、ひいっ…!?」 地に落ち這い蹲りながら、サマエルは怯える。 なんだこれは。 今まで感じたことのない感情があふれてくる。 これは――――恐怖。そして絶望。 「お前は。けっして汚してはいけない聖域を。土足で踏み躙った――――!!!!!」 「れ、恋っ! 助けなさい、私の盾にっ!!」 サマエルが絶叫する。 その叫びに恋は、自らの体を盾にする。 だが。 「っ、くそぉっ――――!!」 痛む足に鞭を打ち、明日香が跳んだ。恋の体を突き飛ばすように抱きかかえ、そのまま転がる。 万策尽きた。 サマエルは絶望する。何故だ。何故こうなった。 こんなはずじゃなかったのに。 こんなはずじゃ―――――― 「サァマエェェエエエエル!!!!」 マルコが叫ぶ。 最後の全身全霊のエネルギー。 リミッターをカットし、最大最強出力のシャイニングアイシクルを展開する。 「貴様の罪! 地獄で――――神姫たちに詫び続けろぉっ!!!!!」 飛翔。 流星のようなその輝く一撃。サマエルによけるすべはなく、ましてや、よける意思ももはやない。 何故ならば、ここにきてサマエルはようやく悟ったから。 自分は――――決して、侵してはならない領域に触れてしまったのだと。 そして。 悔恨と恐怖の中、サマエルは砕け散った。 「あれで、よかったのか?」 デパートを後に、マルコは言う。すでに自分で飛ぶ力も何も残っていないので、明日香の肩に腰掛けて体を預けている。 「いいんですよ、これで」 明日香は言う。 サマエルが破壊された後、恋の取り乱しようはなかった。 砕けた破片に泣きすがる恋。 「なんで…どうしてっ、ともだちだったのに…私には、もう、この子しか…っ!」 それを、明日香は平然と、 「自業自得です。言っておくけど、謝ったりはしませんから。悪いのはそっちですからねー」 と言い放った。 「明日香…っ!」 「なんですかマルコ。事実でしょうがー。さて、いいことを教えてあげましょうか、恋ちゃん。 私たちは、公式のバトルにも参加してます。 悔しかったら、お金を稼いで、神姫を新しく買って、自分の実力で私たちを倒してみせなさい。 ま、できたらの話ですけどねー」 ほほほ、と笑う明日香。そして振り返らずにその場を去る。 「…せない…」 その背中に、恋が怒りの言葉を投げかける。 「絶対に、許せない! 私は、必ず…っ! 必ずっ!!」 「ま、こんな商売してたら嫌われるのは日常茶飯事。どってことないですよー、ほほほ」 「……下手な慰めの言葉は、相手を傷つけ貶める」 マルコのつぶやきに、明日香は笑いを止める。 「怒りであれ憎しみであれ、前向きに歩くための活力は必要、か」 「…何か、言いたそーですね、マルコ」 「別に。ボクのマスターはとことんまで捻くれているへそ曲がりだな、と思っただけさ」 そう、自分が憎まれることで、あの少女が立ち上がれるのならそれでいい。 すでにあのMSSによる洗脳と思考操作は解けている、ならば……あとは、自分の足で立ち上がり、進めるだろう。 その原動力が、自分への怒りだとしても、それでも、何もせずに後悔と絶望に沈んだままよりはよほどいい。 しかし、それでも…… 「癪ですね」 「何が」 「そーいう、見透かしたツラがです。いかにもお見通しですよー、みたいな」 「明日香、キミは判りやすいからね。ポーカーだって弱いし」 「関係ないでしょう!」 「さてね、どうだか。まあいいよ、今日はボクは疲れた。そろそろエネルギーが本気でカラになるから、寝る」 「…寝ている間に油性ペンで落書きしてやりましょうかね、こいつは……」 拳を振るわせる明日香。しかしマルコからの返答はない。 見ると。 「くー…すー…」 マルコは、明日香の肩で安らかな寝息を立てていた。 「――まったく。寝顔だけは、かわいい女の子なんですけどね」 指で、マルコの頬をなでる。 「……お疲れ様でした、マルコ」 「そう、本当にお疲れ様。いいデータがとれたよ」 デパートの監視カメラを眺めていた男が笑う。 亀裂のような笑みを顔に軋ませながら。 少女にサマエルを与えた男。彼は歌うように、慈しむように、賛辞の言葉を投げかける。 「だけど、まだまだ始まったばかりさ。いや、まだ始まってすらいないのかもしれないね。 なにはともあれ、今はただ一時の幕間を休むがいいさ。 神姫たちのワルツは、これから開幕するのだから――――」 男は笑う。男は哂う。男は哄う。 これから繰り広げられる姫たちの戦いに思いを馳せ、ただ滑稽に、道化は笑う。 その悪意もまた、彼女たちの輝きの前では「無価値」なればこそ。 男は演出する。 戦いの舞台を。 全ては――――未だ鳴らぬ、開幕のベルを待つばかり。 続く
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1379.html
トップへ 戻る 武装神姫。 人の持てる技術の粋を結集して作られた、機械仕掛けの御姫様。 そして、今私の目の前にいる小さな少女。 「主よ、一つ質問を許して貰えるか?」 セイレーン型武装神姫、エウクランテ。 「ええ、体重以外ならなんでも」 桃色の髪に赤い瞳を揺らす、小さな、とても小さな少女。 「感謝する。主はどういう目的で私を求めたのだ?」 まるで雛鳥のような純粋さを持つ少女。 「目的?」 まるで子供のような無垢な瞳を持つ少女。 「私は主の神姫だ。主の目的に沿った働きをするのが、私の役目なのだ」 まるで、ナイトのような忠義心を持つ少女。 私が貴女に求める事はただ一つ。 私が、貴女を必要とする理由はただ一つ。 「じゃあ、一つだけお願い出来る?」 「なんなりと、主」 「……私の家族になってくれる?」 貴女は笑った。 「ああ、喜んで」 花の様に、笑った。 武装神姫。 それは、私の新しい家族。 街の片隅に私の住むアパートはある。 近くには商店街があって、駅も近い。 言った事は無いけど、神姫の大学もあるらしい。 「主よ。主は本が好きなのか?」 私の住むアパートは少し古ぼけた印象の二階建てだ。 私の部屋は二階のの角部屋だ。 「どうしてそう思うの?」 部屋は狭すぎず、広すぎず。一人暮らしには丁度いい広さ。 お風呂もトイレもちゃんとあるし、ゴキブリも今のところ見ていない。 「部屋の中が本だらけだからだ」 シルフィの言うとおり、私の部屋は本で溢れている。 本が散らばっている、という訳では無くて、文字通り本で溢れている。 「ついつい、買っちゃうのよね」 壁は勿論の事、床の半分は本に覆われている。 布団の上も例外ではない。 「主はどのような本が好きなのだ?」 シルフィは積まれた本の上に座りながら、部屋を見回した。 壁にもたれながら、少し考える。 今まで店先で興味を持った本を片っ端から買っていたから、ジャンルを気にした事が無かった。 「……強いていえば、神話かしらね」 今まで読んでいた本を見ながら呟いた。 その本のタイトルは「銀の鍵の門を超えて」 「神話か。だが、私のデータの中にある神話とは少し違うようだ」 それもそうだろう。神話、と言っても創作神話の類だ。 比較的新しい、150年程前の作品だ。 最も、これ以外にも神話関係の本は多い。 ケルト神話、ゾロアスター教。ベガーナ神話。 どれもこれも、他の神話に比べて少しマイナーだろう。 「神話とか民族伝承って不思議なものなのよ。凄く離れた地域の神話なのに、似たような神様、似たようなエピソードがあるの」 「そうなのか」 シルフィは小首を傾げた。 その拍子に、短いツインテールにした桃色の髪が揺れた。 「ええ。例を上げればギリシャ神話と中国神話かしら」 読んでいた本を置き、近くの山から目当ての本を引っ張り出す。 「ギリシャ神話と中国神話の共通点は世界創造ね。ギリシャ神話では世界の始まりはカオス……混沌の神から生まれたと言われているわ」 少しやつれた革表紙の本をぱらぱらとめくり、刺し絵が描かれた頁を開き、シルフィに見えるように床に置いた。 「中国神話では、世界が生まれる前は全てが卵の中身の様にドロドロと渾沌としていたと言われてるの」 また、違う山から本を引っ張り出す。 今度は真新しいカバーの本を開き、同じようにシルフィに見せる。 「成程。挿絵がそっくりだ」 シルフィの言うように、そこには黒いタールのような絵と、似たような楕円形の絵が描かれていた。 「そして、両方とも混沌から大地神か、それに似た存在が生まれるの」 広げていた本を閉じ、傍らに積む。 その時、私はある伝承を思い出した。 「シルフィ。貴女は何型だったかしら」 「セイレーン型だが?」 突然の問いに、少し目を丸くしながらシルフィは答えてくれた。 「その語源は知っている?」 「歌声で船乗りを惑わす怪鳥、とデータにはあるが」 その答えに満足しながら、また本を引っ張り出す。 「セイレーンはギリシャ神話における上半身が人、下半身が鳥の怪物の事を指すわ」 「下半身が鳥……なんとも奇妙だな」 古ぼけた挿絵がのった頁を開き、地面に広げる。 「そうね。何より奇妙なのはセイレーンが海の怪物って事ね」 「そう言えば……まるで、人魚だ」 海の隙間から船乗りを誘惑するように泳ぐ挿絵を見ながらシルフィは言った。 「そうね。後世ではまさに人魚として扱われる事の方が多くなったわ」 「……そう言われると、少し複雑な気分だ」 「でも、貴女を作った人たちはそういう事を理解している人たちだと思うわ」 「そうなのか?」 シルフィを迎えた時に付いてきた武装パーツの名前を思い出しながら言った。 「ええ。貴女の武装の名前……ゼピュロス、エウロス、ボレアスは全部、風に関する神様の名前なのよ」 「風……か」 シルフィは密かに嬉しそうに呟いた。 「それに、装備の名前もそうね。イリスは虹の神様。他の名前は全部風に関する神様の名前なの。風は空を連想させるし、鳥は空を飛ぶものでしょう?」 「主よ、もしかして、私の名は……」 期待を込めた眼差しでシルフィは私を見上げてきた。 「そう。シルフィは風の精霊。貴女にぴったりの名前だと思わない?」 それを聞いた瞬間、シルフィは満面の笑みを浮かべた。 嬉しそう、を通り越して幸せそうなその表情を見ていると、こっちも嬉しくなってくる。 「主よ……今一度素晴らしい名を付けてくれた事を感謝する」 「どういたしまして……もう直ぐお昼ね。ご飯にしましょう、手伝ってくれるかしら?」 思いの外、会話に熱中していたようで、気付けば12時まで数分だった。 「勿論だ……と、言いたい所だが、私如きでは足手纏いにしか……」 「大丈夫よ、シルフィ」 こんな時の為に、一緒に買ってあったある物がある。 「……家事用外骨格、ヘンデル。主、これは?」 「國崎技研ってとこが出してる、名前の通りのモノよ」 神姫に対してかなり大きな箱を引っ張り出しながら店頭で見た謳い文句を思い出す。 「これで一緒にお料理出来るわね?」 「ああ、主よ。これなら十分な力になれよう」 学生にはちょっと痛い出費だったけど、シルフィと料理が出来るのならお釣りが来る。 武装神姫。 私の、私だけの新しい家族 トップへ 2話へ -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2626.html
次の日、今は学校が終わり、夜9時までのコンビニアルバイトの最中。 学校でもずっとあの神姫について考えていた。なにかしてあげられないのかなと思っているが、良い案がなかなか出ない。 そんな上の空の状態だから、アルバイトの最中でも度々ミスをしてしまうし。 「……ハァ」 「どうした、青少年。溜息なんてついて、今日は覇気がないぞ。覇気が」 「あ、すみません。君島さん」 今日同じシフトの先輩、君島さんにおもわず頭を下げる。人が少ない頃を見て話しかけてくれたみたいだ。 「いや、なに。いつも生真面目に仕事しているキミがミス連発なんて珍しいのでね」 「……ちょっと、色々ありまして、悩んでいて集中できないんですよ」 「ほう。恋かね?」 「え!……いやいや違いますって」 何を言い出すんだ、この人は。アルバイトの先輩で本名は君島 縁さん。 長く伸びた髪をぞんざいに後ろでまとめていて厳かな口調が特徴。そしてなぜか僕をよくからかってくる。 「なんだつまらないな。キミくらいの年代ならそういうのが相場なんだがね」 「なんで恋愛関連に話がいくんですか。……あ、でも、一応悩んでいることは女の子なのかな。武装神姫のことなんですけど」 「あの戦わせたり、その他の用途に仕事のサポートもできるという噂の機械人形か。はたまた恋人にしたりできるとか。……ハッ! まさか、相手は神姫か!? お姉さんは許さんぞ」 「違いますって! ―――あ、いらっしゃいませ!」 お客さんが来たので、すぐさま商品をうつ。君島さんもいつの間にか商品の整理に戻っている。まったく、あの人は。 頃合いを見て、君島さんにまた話しかける。 「お客さんに見られたじゃないですか」 「クク、取り乱すキミが面白くてな。ちょっとからかってしまった、すまないな。 ……でだ、武装神姫について何を悩んでいるんだね。話してみ。ほらほら」 「……ハァ。わかりました」 二度目の溜息をついて、これまで起きたことを君島さんに話した。 「ほうほう。塞ぎ切った神姫を拾ってしまって、どう接したらいいかわからないと」 「そうです」 君島さんは真面目に取り合ってくれる人ではあるのだけど。なんかな、うまく表現できない。 「私は神姫を持っていないが、メディア情報は度々拾うな。例えば『神姫には心がある』という話が多くある」 「……心ですか」 喜怒哀楽の感情がある。そんな神姫たちであれば、そう思う人たちもいるのだろう。ミスズとか他の神姫を見てて僕もそう思う。 「所謂、AIなんだが。これには様々な議論がされている。今でも決着はついてはいない。ただの自立思考型の人形だろとかな、偉い奴とかがそういうことをのたまうのは世の常だ。 まぁ、そんなことが上では起きている訳だ。……少し反れたが、では、キミのように神姫を拾った場合はどうしたらいいか」 「……どうすれば?」 「人間の女と考えて行動しろ」 「はい?」 「人形とか、野良神姫とか、考えるな。そいつは人間の女の子だ。家出した女の子だ。そう考えて動け。で、仲良くなればいい」 「簡単に言いますけど、塞ぎ込んでいるって話しましたよね」 「一度でくじけるな。弱音を吐くな。何回でもトライだ。さすれば、道は開かれん」 勢いでそう君島さんは言い放った。 なんだか、そう思うとやれる気がしてきた。 僕は単純なんだろうか。それとも君島さんの話術なんだろうか。 「そして、いつのまにか長倉君とその神姫はめくるめく関係に。うわ、面白いし笑えるな」 ダメだ。こんな大人になったらダメだ。 ---- そして。 帰ってきて、僕の部屋に今も謎の神姫がいる。 あれからずっとクレイドルの中にいたみたいで、いまだに何があったのかは話してくれない。これじゃ君島さんの案、強引に会話で仲良くなろう作戦もままならない。 一応、僕も武装神姫をいつかは欲しいなと思ってはいたけどなあ、これを人間の女の子と考えるのか。無理でしょうに。 僕の家庭は母親は僕が幼い頃に病気でなくなり、父親は飛行機の機長をやっていていつも飛び回っているので、家を空けるばかり。世話をしてくれていた母方のおばあちゃんもいた。だけど、中学二年の時に亡くなってしまった。 以来僕はこの家に一人暮らしをしている。父親に心配をかけまいと家事などは一通り覚えて、立派にやっていることを伝えているし、高校生になってからはアルバイトもしていて、生活は充実している。でも、やっぱり一人が寂しい時があるので、淳平とミスズみたいな関係を作れる神姫が欲しかった。 この子を人間の女の子と考えると、見知らぬ所でずっと塞ぎ込んでいて寂しくはないのだろうかと思えてきた。 「一人ぼっちは寂しいと思うけどな」 考えていたことがふと口からでてしまった。 すると。 「………あの」 見ると神姫の子は顔を上げてくれていた。 「!……初めて話しかけてくれたね。どうしたの?」 「えと、その、お話を聞いてもらってもいいでしょうか」 「うん、いいよ」 どういう心境の変化なのかはわからないけど、心を開いてくれた。ただそれだけが嬉しかった。 僕は座布団を用意して腰かける。そして神姫は話し始めてくれた。 「私のマスターはバトルで勝つことが好きでした。自分で考えた武装、自分で考えた戦略、それで戦わせている神姫が勝つととても嬉しそうでした。私の前には、ストラーフのお姉ちゃんがいて、マスターとお姉ちゃんが私を買ってくれて、戦っている姿も見せてくれました。だけど私は……その……武装神姫としては欠陥品でした」 「どうして? 悪い所はないみたいだけど」 「心というか、CSCと言いますか。……私は戦うことを苦手と感じるんです」 「……」 それは戦えなくては“武装”神姫足りえないということを意味するのだろうか。 「訓練とかは普通にできるんですよ。でもバトルだと傷つけるのも、傷つけられるのも嫌に思えてしまって、フィールドに立たされてもまともに戦えなくて、結果マスターにもお姉ちゃんにも見限られて……いられなくて……それで……」 「わかった。もういいよ」 「ぐす……うぅ」 会話を止めると優しく声をかける。泣き出してきてしまったので、それを僕は指で拭う。 あの日にそんなことがあったのか。一人で外をたくさん歩いて、バッテリーが切れる寸前まで猫に追いかけられて、大変な苦労をしたんだな。 「戻れないんだね、居場所には」 「……はい」 「それじゃあさ、よかったらだけど、ここにいてよ。僕は神姫バトルとか興味ないし、話し相手……いや、いっそのこと僕のになってくれないかな」 「螢斗さんのにですか?」 「うん」 強引でしかも傍から見たらプロポーズに聞こえるが、そうではなくて、ただ単に一緒に生活するという事としてのお願いだ。 「そうですね。螢斗さんはお優しい方みたいですし、……喜んで」 「そうか。やった」 こうして、この僕の家に一つの神姫が住むことになった。